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CURVY曲線美

建築の技術とデザインが融合し、曲線の美しさを最大限に引き出した、施工事例の紹介です。
洗練されたラインと流れるようなフォルムが空間に広がりを与え、
視覚的な魅力と機能性を兼ね備えた建築作品をご覧ください。

01 : 円柱のリビング01 02 : 3次元曲線を描く外観02 03 : 波打つ内観の曲線03

01 : 円柱のリビング

2層吹き抜けの円柱のリビングを建物の「核」とし、
各スペースを結んで建物全体に安定感を与えたデザイン。
この円柱に沿う曲線の大開口が空間に広がりを生み、中庭の景色をパノラマで取り込む。

緩やかな曲線を描く大開口が、
中庭の景色をパノラマでとらえる

庭に向かって大きく広かれたリビングの大開口も、円柱に合わせて曲線を描くことで庭への視界が同心円状に広がり、射し込む陽光は健やかな陽だまりをつくります。
プライバシーが守られた中庭に佇むオリーブの老樹をどの部屋からも眺められ、シンボルツリーの老樹もまた、温かく家族を見守り続けます。

建物の核である
円柱のリビングから
スタートした型枠工事

型枠工事は、建物の基礎を形成する重要な工程であり、歪みや凹凸があると仕上げの精度に影響を及ぼすため、精密さが求められます。墨出しによる基準線に沿って型枠を正確に設置しなければ、コンクリート打設時に重みによってズレたり、隙間が生じる可能性があります。
型枠工事は失敗が許されない重要なプロセスで、特に正円の型枠は高度な技術が必要です。

リビングの床は、正円の形状に合わせて円形の大理石を基点に、アール加工を施した大理石の板石を、放射状に張り合わせています。張り付ける位置が少しでもずれてしまうと、全体のバランスが崩れて納まらなくなるため、非常に精密な作業が要求されます。
完成した床は、目地に至るまで均整が取れた美しい空間を作り上げることが出来ました。

流れるような曲線を描く螺旋階段には、アイアン製の手摺りが設置されており、階段の素材には天然石のライムストーンが使用されています。どちらの素材も非常に重く、その重量を支えながら、優美な曲線を描く螺旋階段の施工には、精密な躯体工事が求められます。

リビングを中心に家族の麗らかな会話が広がる、幸福に満たされる住まい

2層吹き抜けのリビングに伸びる渡り廊下から見下ろした景色。
光がたっぷりと注ぐ、陽だまりの中でくつろぐ家族の様子が伺えます。
壁は手ばつり加工のサンドラ・ミントが温かみと高級感を感じさせる仕上がりです。
リビングには優雅なデザインのソファやシェーズロングが配され、ゆったりとした時間の流れを楽しみます。

重厚な建築に対してインテリアは、淡いベージュを基調とした上品な柔らかさを持ち合わせています。天井のモールディング、階段・渡り廊下のアイアン製の手摺り、たっぷりと注ぐ自然光、家族を見守るオリーブの老樹など、さまざまなエレメントがこの家全体に漂うエレガントな雰囲気を作り出しています。

リビングを核とした空間構成が良く分かる中庭から見た住まい。 リビングを中心に東側は来客をもてなす和室、西側にファミリールームを設けました。庭に大きく開いた開口も円柱に沿って曲線を描き、同心円状に視界が広がる心地良い空間です。夜はブラケットライトが放つ、温かなオレンジ色の光に包まれて、家族団らんの時間を過ごします。

02 : 3次元曲線を描く外観

道路から見て逆L字型の土地。
その逆L字の底辺にあたる西側には公園の借景が望める立地条件を最大限に生かした住まい。
ファサードは、ドーム型の3D曲線が建物を包む印象的な外観デザイン。

3次元曲線の壁が目を奪う、
唯一無二のデザイン

建物を覆うようなアールの壁は、アプローチに立った際に外部からの視線を遮る、プライバシー性も兼ねたデザイン。玄関ドアの向こうには、アプローチから続くドーム型の壁が続き、まるで巻貝の中に入り込んで、リビングまで誘われる感覚になります。上部にはトップライトを設置し、アールの壁に沿うように太陽の光が降り注ぐ、明るい空間が訪れる人を出迎えます。

3次元曲線を描く壁は、
精度か求められる緻密な作業

縦方向にも横方向にも曲線を描く、3次元の曲線のドーム型のエントランスホールは、曲面型枠専門の業者が加工したパーツをひとつひとつ組み合わせる、精度が求められる作業です。型枠を組み立てた際、コンクリートの重量を支えるために使用した支保工(所定の位置に物体を固定する仮設構造物)が無数に伸び、その複雑さが伝わります。

鉄筋コンクリート造の型枠工事で曲線を取り入れる際は、型枠の精度と強度が重要になります。 曲線部分は、専用の曲げ加工や特殊な型枠材が必要です。また、CADで計算した寸法でも、実際の組み立て中にズレが生じることもあります。その場合は、一枚一枚の型枠を加工しながら設置するなど、臨機応変な対応が求められる難易度の高い施工です。

曲線の配筋工事は曲げ加工の際、所定の基準を満たすようにしなければなりません。また、過度な圧力はひび割れを招くため、加工精度と鉄筋の品質を確認することが重要です。さらに、鉄筋同士の結束を確実に行い、十分な定着を確保します。施工中も設計図との照合を行い、形状が正しく維持されているか、常に確認することが求められます。

生コンクリートを型枠中に流し込み、強度が出た時点で型枠を解体

コンクリート打設前に型枠と配筋を確認し、均一な流動を確保します。打設中はバイブレーターで締め固めを行い、気泡の除去と密実化に注意しながら、分離や離乳を防ぐために適切な高さと流し込み速度を管理ししながら進めます。仕上げ後は、徹底した養生でひび割れや品質低下を防ぎ、美しい鉄筋コンクリート造の躯体を完成させました。

コンクリートの打ち放しでは、Pコン(型枠を一定距離に保つためのスペーサー)の配置も一定間隔で計画的に行う必要があります。

また、打設不良によりジャンカ(隙間が生じている状態)やコールドジョイント(コンクリートが一体化しなかった継ぎ目)などの不具合も起こる作業を、3次元曲線で行った高度な技術を要する施工です。

天井高6メートルの開放的なリビングは、
扇形の弧を描くダイナミックな大開口です。

開口部を安定して支えるための構造設計が重要で、強度と安全性を確保し、美しい曲線を保つことが求められます。
また、鉄平石のポイントウォールの設置は石材の重量を加味した技術を要し、デザイン性と耐久性を両立させるには、高い施工技術が求められます。

唯一無二のデザインを叶え、曲線を生かして光と取り込む

コンクリートの打ち放しのモダンな住まいは、建物を包むコンクリートの壁が目を引き、
石材の壁、木製の格子やドアなど自然素材を効果的に取り入れて、絶妙なバランスを図りました。
木製の玄関ドアの周囲は、透明感のあるガラスで仕上げていますが、
特徴的な壁は横方向にもアールを描きつつ、外部からの視線をカットし、内部の様子が分かりにくいデザインです。

エントランスは無機質なコンクリートの壁に対して、
床は無垢のウォールナットのフローリングを採用。

住宅らしい温もりを与えました。
アプローチからエントランスへと続くアール状の壁に沿って歩みを進めると、上部のトップライト(天窓)から注ぐ光に満たされ、夜はアッパーライトが灯り、その曲線を強調します。

リビングは開放感と温かみを備えた魅力的な空間です。天井まで伸びる高さ6メートルの大開口が、扇状に広がることで自然光をふんだんに取り込み、庭の緑やその先の公園の景色を借景します。

そして、間接照明が灯る夜は、小端積みの鉄平石の陰影が強調され、幻想的な雰囲気を醸し出します。

03 : 波打つ内観の曲線

敷地の南北に伸びるカラーガラスの壁面には水が伝い、滝のように水を落とす。
湖畔をイメージしたプールを湛え、波打つ曲線の壁が住まいをめぐり、空間をつなぐ。
そこは、住宅街とは思えない都会のオアシス。

波打つ壁が空間をめぐる

「どこにいても家全体を見渡せる開放的な住まいで、自宅をリゾートのような環境にしたい」とのご希望に応えたプランです。住居、アトリエ、プールの3つのゾーンに分かれた住まいを、波打つような曲線の壁でつなぎ、一体感を持たせました。緑と水景のある中庭を介して光が差し込む室内は、自然の心地良さで満たされます。

流れるように美しい曲面壁の施工

図面の指示に沿って現場での寸法取りを慎重に行い、施工図面に基づいて線や寸法を書き出す、墨出しと呼ばれる施工の目印を床や天井などに記し、その印に沿って、内装工事に用いられるLGS(軽量鉄骨)で骨組みを行っていきます。曲面壁(アール壁)の難しさは、平面とは異なり、曲率に応じた正確な施工図に沿った施工が求められる点です。

骨組みに沿って不燃性石膏系素材のFGボードを張り、曲面壁を施工します。FGボードは水を吸わせると曲げることができ、乾燥後はその形状を保ちます。1枚張りでは継ぎ目ができてしまうため、ずらしながら2~3層張りで仕上げます。曲面壁は、材料の特性や加工精度、歪みやズレが生じる、技術と経験を伴う施工です。

曲面壁の仕上げには、吹き付けタイルを使用しました。スプレーガンを用いた吹き付けは、均一な仕上がりを可能にし、その均質さ故、素材の主張を消して流れるような曲面壁をムラなく、美しい白色に仕上げています。美しい曲線の表現の為には、下地の調整が欠かせません。見えない部分での施工精度が求められる作業です。

リビングの対面にあるプールも、美しく波打つ曲線の壁

リビングの対面には2層吹き抜けの室内プールがあります。
プールの施工は防水加工と防湿対策を徹底し、湿気による建物への影響を防ぐ必要があります。
その為には換気システムも重要で、湿度と温度を適切に管理できるように計画しなければなりません。
吹き抜け部分は構造強度を確認し、特にトップライト(天窓)周りは防水、荷重、変形に強い施工が求められます。

継ぎ目や隙間のない断熱層が形成され、機密性の高い優れた断熱性能を発揮する断熱材の吹き付け施工を施した壁面に、曲面を形成するための骨組みが組まれ、その上にFGボードを張って波打つような曲面壁を作り出します。プールのある環境では、湿気や温度の変動が激しいため断熱対策も重要です。

各所に設けられた丸窓のトップライトは、プールの天井部にも配置されています。鉄筋コンクリート造の天井裏には柱や梁、配線などが複雑に交差しており、トップライトを設けるためにはその間を抜けて、光を取り込まなければなりません。また、丸窓は精密な寸法管理が求められ、円周全体で均一な仕上がりを確保するには、高い技術を要します。

プールの施工も終盤を迎え、後はタイルの張り付けです。タイルをモルタルで張り付ける湿式工法では、下地にひび割れが発生すると、タイル面にも同様にひび割れが起こる可能性があるため注意が必要です。室内プールは換気や温水システムなどの設備の動作確認も行い、不具合がないか十分にチェックすることが求められます。

中庭を囲むように、波打つ壁が空間をめぐる

敷地の端から端まで伸びるカラーガラスの壁面は約27メートル。ダイニングキッチンから中庭を通り、室内プールへと一直線に続きます。
一方、波のような曲線を描く壁は、吹き抜け部分を囲むように配され、対比する美しいラインが特徴的な住まいです。
開口は中庭に向かって大きく開かれ、開放感のあるプライベート空間を実現しています。

長さ約11メートルある室内プールは季節を問わず使用でき、リビングから回遊するように波打つ曲線を描く壁が美しく広がります。円形に切り取られたトップライトから水面に光が落ち、キラキラと輝く光の中を泳ぐ光景は、リゾートそのもの。水と緑と光が心地良く調和し、日常の喧騒から解き放ちます。

エントランスを進むと、ガラスで囲まれた明るいLDKが広がり、中庭との一体感を感じられます。大樹をイメージした階段が上階へ向かい、「家族で過ごす場所はオープンに」とのご要望に応え、吹き抜けを介して2階のホールと一体化しました。外界を遮断し、まるでオアシスのように水を湛える、家族の安息の地となった作品です。